祈りにかえて

雑感雑記の文章練習・読書日記・調べもの進捗報告書/140文字以上用メモ

”ソ連崩壊と自殺者の記録”

死に魅入られた人びと―ソ連崩壊と自殺者の記録

死に魅入られた人びと―ソ連崩壊と自殺者の記録

 

  推しです。ここまで推しておいてアレですが、本の質というか完成度的には『セカンドハンドの時代』の方が上だと思っています。

 

はるかかなた、カムチャッカのペトロパヴロフスクで生まれた、ひとりの少女がいました。現在は大きな町ですが、当時は部隊ごとに分けられた軍の居住区で、中心にロシア人学校がありました。少女の愛読書はオストロフスキイやジュール・ベルヌ。夢は一九一七年に生きること、革命に参加して、生きているレーニンに会うためです。あるいは、宇宙船がはるかかなた宇宙にとびたつ二一世紀か二二世紀に生きること。ほかの少年少女とおなじです。あの頃はみんな平等でした。スターリンが生きているあいだは、私たちみんなが平等だったんです。十六歳になる甥に最近言われました。
「おばさんたちのスターリンにはうんざりだよ。ぼくはイワン雷帝の本を読むよ、スターリンの本は嫌いだ」
 スターリンに関心をよせるのは、もうじき私たちだけになるんでしょう。スターリン世代だけに。犠牲者と迫害者は、おたがいの運命を背負わされています。手術が必要なんです。学校から帰った時、「スターリンが死んだ」と泣いている両親の姿を見た三月のあの日から少女を切り離すために。(そうです、またスターリン、スターリン。あなた方はもう耳にタコができてるでしょうが、私たちの人生からスターリンをとったらなにも残らない、なんの意味も、恐怖の意味すらも)。戸外は吹雪、酷寒でした。そういう日は、子供たちは下校し休校になります。それなのに、少女は部屋のすみにカバンをおき、昼食もとらず、学校へひきかえすのです。スターリンが亡くなったのに、スープなんか飲んでる場合じゃないわ!スターリンが!この子はずっと泣いているんです、この日すでに二度も歩いた七キロの道を。だれも知らなかったし、だれも命じたわけじゃなかったのに、生徒も教師もひとり残らず学校へもどってきた。人々は職場や図書館や集会所へむかった、いっしょにいるために。帰りは網につかまりながら一列になってよろよろ歩いた。吹雪いている時に人の姿を見失うと、迷子になって凍死しますから。次の日、少女が覚えているのは、まっしろな雪のうえにうねうねとのびる人々の黒い列、列。葬送曲。そして宇宙からとどく信号のような(それほど遠いのです)モスクワのアナウンサーの声――「こちらはモスクワ放送局です、こちらはモスクワ放送局です」

 

(『死に魅入られた人びと』)

 

 ところで『現代思想・就活のリアル』に『死に魅入られた人びと』への言及が載っているとのことで確認してみました。あった。

 ソ連崩壊後における自殺者をめぐる肉声の記録、『死に魅入られた人びと』。その語り部となったスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチは、当時歴史の速度の中で急速に溶解しつつあったが、しかしかつて現実に作り出された「ホモ・ソヴィエチクス」という人間に同書の取材の中で「新しく」再会した。「私たちが教えられていたのは、死ぬこと。私たちがしっかり身につけていたのは、死ぬこと。生きることよりはるかにしっかりと。だから、私たちは区別がつかなくなったのです。戦争と平和の、日常と存在の、生と死の。痛みとさけびの。自由と隷属の」――夢からすっと醒め、自らを悪夢だと知覚し絶句するその瞬間に。

『現代思想 2013年4月号 特集=就活のリアル』

  んー。好き。

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 疲れが激しいんですけど、「つかれた…おふね見に横須賀に行きたい…」って自分でなったのが意外でした。艦艇擬人化クラスタなのに”意外”ってなんだ。

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 11月は最悪仕方ないとしても、12月コミケに当選したら何かは絶対に出さないといけません。そろそろ動かないと…

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 フォロワーさん数人が異口同音に言っていた「分かりやすい小説はいい小説」「分かりやすいと言われると嬉しい」の意味が最近になってやっとわかってきました。自分で書いてみたら「分かりやすい」って本当に難しいし、いいことです。「公共性」だなぁ。